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トマト:脂肪燃焼効果 京大グループが発見
京都大の河田照雄教授(食品機能学)らの研究グループは中性脂肪を減らす働きがある成分をトマトから発見した。メタボリック症候群の改善などに役立つという。米国のオンライン科学誌「プロスワン」に10日掲載された。
トマトは健康野菜として知られ、摂取量の多い人には脂肪肝や高中性脂肪血症などが少ないという調査例もある。
こうした効果に注目した研究グループはトマトの果汁成分から、脂肪を燃焼させる遺伝子を増やす物質を探し、「13−oxo−ODA」というリノール酸の仲間を発見した。この成分を肥満マウスの餌に0・02〜0・05%混ぜて4週間飼育すると、血糖値が約2割、血中の中性脂肪濃度が約3割減り、脂肪燃焼の指標となる直腸温も0・5度以上、上がっていた。人間に換算すると、トマトジュースを1日3回、200ミリリットルずつ飲むのに相当する摂取量だという。
河田教授は「有効成分は確認されたが、これだけをサプリのように取るのではなく、トマトなど新鮮な野菜をたくさん食べることが大切」と話している。【榊原雅晴】
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このニュース、いつものように新成分発見か、フムフム、と見ていたのですが、
どうやら小さな記事で終わることなく、全国でトマト売り切れという現象が起きているそうです。
カゴメとデルモンテの研究者が共著だそうですので、
両社とも投資効率としては上々だったのではないでしょうか。
とはいえ、「そんなすごいことか?」と原著をあたってみました。
Potent PPARα Activator Derived from Tomato Juice, 13-oxo-9,11-Octadecadienoic Acid, Decreases Plasma and Hepatic Triglyceride in Obese Diabetic Mice
PLoS one のイカした特徴は
論文の一つ一つのアクセス数が見れるところなのですが
他の論文が 200-300のアクセス数なのに対して
この論文、9302回のアクセスがありました。
この報道状況からするとそのほとんどが日本人だと思います。すごいなぁ。
論文から要点を抜粋すると
トマトに含まれる 13-oxo-9,11-octadecadenoic acid (13-oxo-ODA) が
PPARα agonistとしての作用を示すかどうか、脂質異常症・脂肪肝を改善するかを
試したところ
血中トリグリセリド低
血糖値低下
耐糖能増加
の作用を示したそうです。
餌は0.02%, 0.05% 13-oxo-ODA混餌条件。
よく論文を見てみるとインスリンも低下しているし、アディポネクチンも増加。
マウスで糖負荷試験もやっています。
n=6-8 と例数が少ないのが難点かもしれませんが
結果としては面白いですね。
さて、
マウスって一日に3-5gくらいの固形餌を食べます。
なので、実際効果を得られた摂食 13-oxo-ODAって最大約2.5mg。
マウスの体重は約20-30gであることを考えると、
ヒトは60kgですので60000g/20g x 2.5mg = 7.5 g。
トマトは大型のもので200gくらいなのですが、1個にそんなに含まれているのかな?
報道ではトマト2〜3個だそうですが、そうだとしてもトマト1個に1%程度含まれている計算。
他の成分や特に水分が多いトマトを食べると効果が得られる、
というのはちょっと…という印象です。
この成分、特許検索をチラッとしてみましたが、まだ取られてないみたいですね。
ということはこの論文が出てしまったことで物質特許はもう取れない、ということなのでしょうか。
そうだと仮定すると、日本の研究が残念なところだなーと思ってしまいます。。
ちなみに偶然見つけてしまいましたが
別の論文で既にPPARγagonistであるという報告もありました。αじゃなくてγでしたが。
13-Oxo-ODE is an endogenous ligand for PPARγ in human colonic epithelial cells
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